
1-4. 相続人不存在と相続放棄の違い
相続人不存在と相続放棄、制度上の違いと判断ポイント
相続実務において、「相続人不存在」と「相続放棄」はしばしば混同される概念です。
いずれも「相続人が財産を取得しない」という点では似ていますが、法的な前提・手続き・対応方法が大きく異なります。
本項ではその違いを整理し、相続財産の管理・売却における留意点を解説します。
■ 相続放棄:相続人が存在しつつも、権利を放棄する手続き
相続放棄とは、本来相続権を有する者が、その相続を「家庭裁判所に申述することによって拒否する」制度です。
一般的に、被相続人に多額の債務がある場合や、争続を避けるために行われます。
・相続人が存在する
・相続放棄の申述が必要(原則3ヶ月以内)
・放棄者は初めから相続人でなかったものとみなされる
・他の相続人や次順位者に相続権が移る
つまり、相続人が存在しないわけではなく、順次相続権が移っていくのが原則です。
※相続放棄の申述期間(熟慮期間)は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3か月以内とされています(民法915条)。単に死亡日から起算されるわけではありません。
■ 相続人不存在:法律上、相続人とされる人物が誰もいない状態
一方、「相続人不存在」とは、被相続人の死亡時点において法定相続人がいない場合、または全員が相続放棄し、結果的に誰も相続人として残らなかった状態を指します。
この場合、民法第951条に基づき、家庭裁判所が相続財産管理人を選任し、遺産の清算・管理を行うことになります。
・相続人が法律上存在しない(直系尊属・配偶者・兄弟姉妹も含めて)
・相続財産管理人の選任が必要
・清算後、特別縁故者がいなければ国庫へ帰属
つまり、相続放棄の延長に「相続人不存在」が生じうるという構造です。
■ 実務的な違いと注意点
実務上、以下のような違いが重要になります。
■ 相続放棄と相続人不存在の違い(早見表)
項目 | 相続放棄案件 | 相続人不存在案件 |
相続人の存在 | あり(放棄した者) | なし(法律上も最終的に存在しない) |
手続の主体 | 放棄者が家庭裁判所に申述 | 利害関係人が管理人選任を申立て |
財産管理の主体 | 次順位相続人または放置されがち | 相続財産管理人 |
財産処分の可否 | 次順位者または遺産分割協議が必要 | 家裁の許可のもとで管理人が売却可能 |
相続放棄をしても直ちに相続人不存在となるわけではない点が実務では非常に重要です。
相続人不存在の確認と、家庭裁判所での管理人選任申立てが別手続として必要になることに留意が必要です。
■ 邦文不動産の対応
当社では、相続人不存在の確認から、管理人選任支援、売却活動、買主選定、契約・引渡しまでを一貫して対応しています。
相続放棄が複数重なった結果、誰も相続人がいなくなってしまったケースなど、管理人選任のハードルが高い不動産も、制度理解と実務経験をもとにサポート可能です。
次回は、遺言書がある場合の「相続人不存在」への影響と、どのように不動産処分へとつなげていくかについて解説します。

